列車の中にどろぼう泥棒?
日が昇り、気持ちのいい朝であった。まさにグッド モーニングである。列車が小さな駅に止まった。こんな小さな駅でも降りる人や乗る人がいるんだなあと思いながら外を見ていると、数人が降り、五人ほどの若者が乗って来た。
まだ六時ということもあり、ほとんどの人は寝ていた。私の車両では私だけが部屋から出て景色を眺めていた。列車が再び動き始めた。

五分ほどすると、若い男三人が私のいる車両にやって来た。さっきの駅で乗った連中だろうと思った。すると、その連中は各部屋をこっそり開け、腕だけを部屋に入れ、何かを取り出そうとしているではないか。その時、これが本に載っていたことだと思った。三人のうちの一人が私に気づいたが、人差し指を口に当て、焦る様子もなく、仕事を続けていた。さすがに私のいる方にはやって来なかった。一時間後、またある小さな駅に到着。その五人連れが降りた。私と目が合った一人が、列車が動く際に、ほほ笑んだ。私の方は苦笑いだった。

とにかく、あの泥棒五人組みにはびっくりした。だが、納得のいかないことがある。考え過ぎかも知れないが、不審な点がある。というのは、あの五人組みが仕事をしている間、一度だけ車掌が私の前を通り過ぎたのである。その時、私はあの連中、捕まってしまうかも知れないと思った。しかし、様子からするとそういうことはなかったらしい。さらにおかしいのは、その列車は寝台車だったということである。つまり、一般客が座れるような座席はないのである。食堂を除いて。しかし、こんな時間に食堂は営業していない。これは確認ずみ。例の五人組みは、間違いなくあの車掌とすれ違ったはずである。以前の被害届けも出ているだろうから、車掌が不信に思わないのがおかしいわけだ。私の推理によると、あの車掌もぐるかも知れないということである。

知り合いがイタリア旅行中、キップ購入の際、駅員におつりをごまかされたそうだが、私は幸にしてそうい目には遭わなかった。しかしおつりの渡し方が遅いように感じたことはあった。こちらから催促しないとおつりを渡さないというケースも多いらしい。注意してもらいたい。
 一人旅をしている人がはめられがちだが、部屋に泥棒が入って、ホテルに文句を言っても全くだめ。へたしたら、フロントに預けて盗まれても、自分達のミスを認めないかも知れない。

われわれ日本人には考えられないが、こういう国も実際に存在しているのである。ホテルで泥棒に入られた件も、もしかしたら、メイドやホテルの人間がぐるになっている可能性もある。そういうことをしっかり頭に入れ旅行をしなければならないし、ましてや、一人旅の時はとくに注意すべきである。

私の列車は、予定より三十分遅く、午前十時にサンツという駅に到着。天気は最高。そのせいか、スペインの情熱を感じた。私は単純な男である。

許せない短大生二人
本当にあの女二人だけは許せなかった。今思い出しても頭にくる。しゃべくりで、礼儀・常識知らず、馬鹿だし、きわ極めつけは二人ともブス。あの二人のせいで、バルセロナの旅だけでなく、その後の旅まで大きく影響し、バレンシア、トレド、グラナダ、セビーリャ、コルドバ、そしてモロッコへ行く予定が、すべてパー。行けずじまいに終わってしまった。

バルセロナに午前十時ごろ到着。それから聖家族教会へ向い、現代美術館、コロンブスの塔を通り、平和の広場、モンジュイクの丘を回って、ホテルを探し始めた。探し始めたのが午後七時を回っており、すぐには見つからなかった。五つ目のホテルに空きがあり、どうにかチェックインをして、部屋に入った時はすでに十時を回っていた。疲れていたが、お腹が空いていたので、食事に行こうかベッドの上で迷っていると、隣の部屋からかわいらしい日本語の会話が聞こえてきた。これが災難の始まりであった。

女の子のかわいらしい声にそそられ、あわよくば食事でも一緒に、と考えた。そう思うと疲れがはんげん半減した。私が声をかけると、「私達がそちらに行きます」という返事。ドキドキして待っていた。五分後、ドアがノックされ、大きな期待とちょっとした不安で彼女達を迎えた。会った瞬間、私の大きな希望は宇宙の彼方に、おう猛スピードで飛んで行った。私の口が自動的に「バルセロナの情報が欲しいんだけど、どこかいいところなかったかい」と発した。食事などという野望はどこかに吹っ飛んでしまった。(つづく・感想文をお寄せ下さい)