チューリッヒ
チューリッヒといえば、ここで生まれ育った、十八世紀の教育家、ペスタロッチを思い出す。教員になろうとしたら大学時代に教育史を取っているはずだから、必ずこの名前にぶつかる。
チューリッヒは、スイスで最大の商業都市として有名である。

もう一つ思い出すことは、銀行であろうか。スイスの銀行は世界的にも有名で、世界の悪人達が、スイスの銀行に口座を持っているケースが少なくない。試しに私も銀行の窓口で、口座が開けるか尋ねると最低金額が十万以上など、かなり条件が厳しかったと思う。正直に言って、チーリッヒの印象はとても薄い。泊まったホテルさえ思い出せない。市内観光はペスタロッチ公園でペスタロッチの像を見て、チューリッヒ大学と美術館を回り、チューリッヒ湖の船着場で、船をぼうっと眺めながら、パンをかじっていた。ただ、ジュネーブからの列車の三時間は、見ほれてしまうほど美しい景色で、何度か、小さな駅で降りてしまいたいと思ったほどだった。

オーストリア
インスブルック
チロル川とイン川に挟まれた小さい町で、スキー場で有名なところである。チューリッヒから列車で四時間。この間の車窓から見える山並みも素晴らしく、四時間があっという間に過ぎ去った。オーストリアのインスブルックからモーツアルトの故郷のザルツブルグ、首都のウイーンに向かう予定でいた。インスブルックには特別興味があったわけではないか、ガイドブックに載っていたし、次のザルツブルグまでは遠いので、一休みのつもりでインスブルックに立ち寄った。街はハプスブルク家によって築かれ、一部が中世の名残りを止めていたが、その周りの山々の方が素晴らしく、まるでスイスの一部のようだった。

駅を降り、街に出ると凱旋門にぶつかり、そこを右に曲がると、黄金の小屋根という、街の象徴であるキリストが生まれた馬小屋を再現した建物にたどり着く。チロル民族博物館もあり、この街の歴史や文化に触れることができる。さらにもう少し進むと王宮庭園があった。それほど大きくはなかったと思う。ここに一泊、朝一番でザルツブルグへ向かった。

ザルツブルグ
ザブツブルグというと、何と言ってもモーツアルト。その故郷ということもあり、観光客でいっぱいだった。また、いたるところから音楽が流れてきて、まさに音楽の都という感じがした。私がここを訪れた理由は、大学二年の時、英文特講というクラスでモーツアルトの生涯を書いた『アマデウス』を読んだからである。それ以来、いつかザルツブルグに行きたいと思うようになっていた。それがかなえられて気分がよかった。旅行中は誰にもハガキを出さずにいたが、この時だけは、英文特講で『アマデウス』を講義してくれた酒井先生に手紙を出した。

ザルツブルグにはザルツハッハ川を挟んで、いろいろな寺院が並んでおり、歴史を感じさせる建物が多くあった。議事堂、ミラベル宮殿、聖セバスティアン教会、モーツアルテイム、モーツアルトの生家、祝祭劇場、大聖堂など。とくにこの祝祭劇場から大聖堂までの通りが、まるで日本の祭りのような人ごみで、レストランや土産物屋がずらりと並んで賑わっていた。クラシック音楽があちこちから流れていた。

一○七七年に建設されたホーエンザルツブリグ城は丘の上にあり、内部は博物館になっていた。中世らしさを残した城の一つであろう。また、その丘からの景色が素晴らしかった。もし時間とお金とかわいい彼女でもいれば、三日はこの町に滞在し、いろいろな音楽祭に出席したいと思った。新婚旅行には最高かもしれないね。いつか奥さんを連れて行きたい町の一つである。
次はウイーンである。 (つづく・感想文をお寄せ下さい。)