彼がシャワーを浴び終わると、また新たに素朴な疑問が浮かんできた。それは、どういうふうにパンツにしまい込むんだろうと。気づかれないように注意して見ていると、普通にパンツを履いた。またさらに、素朴な疑問が私の脳裏をよぎった。おちんちんの先がお尻の穴に触れないのか、と。ちょっと下品でごめん免なさい。でもそう思った。そう考え始めるときりがなかった。トイレで大の方をして、水で流す時、おちんちんをしっかり持ってないと、水に触れちゃうんじゃないかなあ、などなど。

その晩は、次の日がテストだというのに、そのことばかり考えてしまった。そして多分彼は、そのことで悩んでいるのではないか、と勝手に想像してしまった。ある時、その友人を含め六人ほどでワシントン湖に遊びに行った。そのうちの四人はすでに水着に着替えていたので、更衣室に行くこともなく、湖に飛び込んだ。後の二人は十五分してもやって来ない。その一人が例の彼である。

アメリカ人は、日本人とは違い、細かい気遣いというか配慮がないと思う。若い女性が脇毛の手入れをしていなかったり、下の毛をパンツからはみ出したままでいたりで、そういうことを気にしないようだ。あっけらかんとしている。それを考えるとあいつ、まさかパンツからはみ出した状態で来るのではないか、と想像してしまった。

バレーボールの道具を持ってきていたので、女の子を誘って一緒に遊ぶという計画であった。が、あいつと一緒にバレーボールなんて出来ないと思った。あいつのはみ出した姿を見たら、女の子は来やしない。私は緊張しながら彼が来るのを待っていた。そのうち一人がやって来た。最後は例の彼である。遊びに来たというのにこんな緊張感を味わえるとは思ってもみなかった。彼が走って来た。はみ出してはいない。とりあえずホッと胸をなでおろした。トランクスタイプのパンツを履いていた。その下にはサポーターも着けていて、彼のものははみ出していなかった。

しかし、気に始めたら止まらないのが私の性格。数人の女の子を誘い、バレーボールを始めたものの、彼の激しい動きに、そんなに動いたらはみ出してしまうぞ、と心の中で叫んでいる自分に気づいた。彼は私の心配など微塵も感じていないようで、転んだりジャンプしたり、激しく動いていた。何か不思議な一日だった。アメリカならではの体験である。

石鹸を落としたら
大学の寮でシャワーを浴びた時のことである。私より先に二人が鼻歌まじりでシャワーを浴びていた。私は二人の間にあるシャワーを使うことにした。本当は、そこは使いたくなかったのだが、他のシャワーが壊れていたので仕方がなかった。男性なら分かって貰えると思うが、二人は私より二回りも体が大きく、ものも大きかったからである。事件はここからである。

身体を洗っていた石鹸が、私の手からすべり落ちてしまった。辺りはシャワーの湯気で何も見えないので、私はしゃがみ込んで、手探りで石鹸を探し始めた。すると、両脇の二人が、そんな私に気づき、同時に「ヨシ、一体何をしようとしているんだ!」と、驚きというか、あせってというか、何とも表現しにくい奇声をあげた。私は「石鹸を落としたから探しているんだ」と答えると、一人が「ビックリさせるなよ」と安堵感のこもった声をあげた。私のただ石鹸を探しているだけの行為が、同性愛ととられてしまったのだ。アメリカならではの話。これと関連してもう一つの話をしよう。

見事な筋肉 
大学のジムで筋トレをしていた時のことである。友達の筋肉が鍛えられていてあまりにも見事だったので、私は「凄い身体だね」と言いながら、彼の分厚い胸に触ろうとした。相手は過剰に反応し「私に何するんだ」と怒りのこもった声を投げつけてきた。私は「いや、凄い筋肉なのでどんなものか、と思って」と言うと、彼は私に「アー ユー ファッグ?」(お前は同性愛者か)と詰問口調。(※著者註=ファッグは差別用語の部類に入ると思う)。私はあわてて「ノー」と答えると、彼に「それじゃ、こんなことするな」と言われてしまった。この時、ここはアメリカなんだ、とつくづく思ったものである。

ついでなのでシャワーに関する話をもう一つ。
私が入っていた寮のシャワーはとても変わっていた。一日十回程度、一瞬だが熱湯が出てきたのである。これが本当に熱いのだ。熱湯を浴びたところが赤くなってしまう。熱湯を浴びると誰もが悲鳴を上げる。私も大学時代に三度ほど経験した。 (つづく・感想文をお寄せ下さい)