私がサウナに入っていた時のことである。私一人だったので筋トレをやっていた。凄く汗をかいてしまい、私の周りの床は落ちた汗で水びたしの状態だった。そこに数人の男女が入って来た。そのうちの一人が私を見るなり「お前、馬鹿か」と言ったのである。ところが私はその単語が聞き取れず、「何」と聞き返した。すると彼は再び「お前は馬鹿か」とく繰りかえ返した。しかし私はその英単語が理解できなかったので「私はあなた貴方が話している単語の意味が分からない」と言った。

彼は私が分からないと言った単語だけを強く発音した。彼は、「You are nut」(ユー アー ナッツ)と言った。この時私は「nut」(スラング=俗語=で馬鹿という意味)と言う単語の意味を全く知らなかった。そのため私はその英語を「ユー ウォーン ナッツ」、つまり「Yuo want nut」、「お前、ピーナツが欲しいのか」と解釈してしまった。

パニクッテしまった私は、「Here」(ここでかい)と聞く。すると彼は「ヤー」と大きな声を上げた。彼の「ヤー」の意味は、here(サウナの中で)私が筋トレなどしているのはおかしい、馬鹿だということだった。ところが私は、ここでピーナツをくれるという意味で彼が「ヤー」(イエス)といったと考え、「No thank you.I don、t want to eat nut now」(いいえ結構です。私は、今ピーナツは食べたくありませんから)と答えたのだった。彼が聞き返し、私が同じ返答をすると、彼は笑いながら「俺をからかっているのか」と言う。が、これも私が理解できない表現で、「You are pullimg my leg ?」と言ったのだった。「pull」(プール)は「引っ張る」、leg(レッグ)は「足から膝の部分」、つまり足を引っ張るということになる。レッグの意味だけは分かったが、聞き返したが全体が理解できない。

私は「I never touch your leg、 right?」(貴方の足なんか触っていないだろう)と言った。すると、それを聞いた男女は、腹を抱えて笑いだした。意味が分からないのは私だけ。女性の一人が「nut」は「馬鹿」、「pulling leg」は「からかう」と言う意味だと教えてくれた。

もう一つ、意味が分からずに失敗した話をしよう。
私がレストランでアルバイトをしていた時、同僚にドゥエンという名の日系人の学生アルバイトがいた。顔は日本人だが、日本語は挨拶程度しかできず、態度・考え方はアメリカ人だった。彼と私はバイトの日が金・土・日曜日と同じ日だった。ある日彼は無断で金・土曜日を休んだ。オーナーに電話をするように言われたので、早速電話を入れた。すると女性が出た。私が「ドゥエンはいますか」と尋ねると、相手の女性は小さな声で「He passed away」と答えた。私は女性の声があまりにも小さかったが、「pass away」の意味を感覚的に取ってしまい、普通の声で「本当ですか、それではまた電話します」と言って切ってしまった。

一週間後、オーナーから電話の内容を聞かれた。私は「彼は外出していたのです」と言うと、「何を言ってるんだ。ドゥエンは事故で死んだんだ」と言うではないか。「pass away」の意味は死んだということであった。Dieやdeathの単語は日本人に馴染みはあるが、「pass away」は詩的、文学的表現で、その時私は分からなかった。この時だけは自分の英語力のなさを呪った。ドゥエンの冥福を祈りたい。

日本語は難しい
英語の言い回しが分からず、いろいろ失敗を重ねたが、日本語は難しい、という本を読んだので、ここでそれを紹介しよう。偶然『スカートの風』という、韓国女性について書かれた本を読んでいて、日本語の難しさを言及している部分があった。全てを同意するつもりはないが、かなり興味ある面白い内容だと思うので少し紹介する。

その本の初めの方に、日本語の「泥棒に入られた」という言い方はおかしい、と書いてあった。確かにわれわれはこのような言い方をする。これは、泥棒に入られたのは、自分の責任であり、家に鍵をかけ忘れた自分の過ちであるからだ、ということになる。これに対しその本では、泥棒する者が悪いに決まっているから、泥棒を主語にして、韓国では「泥棒が私の家に入った」になると書いてあった。この点から考えると、日本語は受け身の言語ということになる。 (つづく・感想文をお寄せ下さい)