バブルの時代、日本人は金を持ったがゆえに、傲慢さに磨きをかけてしまった。このように書いている私もそういう面はいなめないと思っている。免税店の話からずれてしまったが、私が言いたいのは、お金を持ったならその分、知識や常識や教養を身につけないと、緒外国からかなりの顰蹙(ひんしゅく)を買うと同時に、馬鹿にされる、ということである。

行儀が悪い留学生
帰国してしばらくしてからのことだが、アメリカの知り合いに電話を入れた。その中の話の一つに、日本人留学生の態度があまりにも悪く、顰蹙を買っているということが出た。だいたい、留学生は最初、学校の紹介でホームステイを行う。私もそうだった。そんな日本人留学生が最近行儀が悪いらしい。

例えば、夜中に友達を連れて来るとか、部屋でマリファナを吸っているとかなど…。そういうことがかなりあるらしく、日本人留学生を受け入れるところが少なくなった、と言っていた。たぶんこれを読んでいるみんなの中にも留学したいと思っている人は少なくないと思う。留学することになったら自覚して貰いたいのは、留学生はある意味で日本の代表であるということだ。一人の日本人の行動が、全ての日本人の評価を決めてしまうと考えるのはあまりにも短絡的過ぎるが、日本の代表ということを常に頭に入れ、行動して欲しい。

アメリカ人の中には日本人にそれまで会ったことがない人もいるわけである。その人たちが初めて会った日本人の印象に強く影響されるということは不思議でもなんでもない。私は、庶民レベルでの相互理解が、日米摩擦解消の第一歩と考えているので、これからアメリカに行く人は、このことをねんとう念頭に入れて行って貰いたい。

第九章 個人主義
アメリカの個人主義については、今まで数多くの論議がなされてきた。アメリカ人はこれを賞讃するが、批判的な立場に立つ人は、アメリカは個人主義的傾向が強すぎると非難し、アメリカの個人主義的なやり方が、人間らしい生き方に害を及ぼしているのではないかと懸念する。ただ、もう一つはっきりしていない個人主義について、私なりの考えを述べてみたい。

日本人が顰蹙を買うのは、団体で外国旅行をする時だ。日本人は、周囲の外国人を無視し、まるで日本国内にでもいるような調子で振る舞う。酔っ払ったり飛行機の後部で歌ったりするのである。団体行動の際にはた迷惑な日本人とは違い、アメリカ人は個人として要求し、対決しようとする。

そのいい例が、アメリカ人も外国旅行の際、他人に迷惑をかけ、顰蹙を買うことがままある。ホテルのフロントでもっといい部屋を用意しろと要求したり、カフェでハンバーガーを持って来い、と怒鳴っているのを見たことがある。これらはみにく醜いアメリカ人の典型的な例である。自分たちの権利や好みは尊重されるべきだという要求を、外国人に突きつけるのである

日本の場合、死ぬまで親子の縁は切れないし、死んでも切れない。例を上げ考えてみよう。いやな例だが、もしみんなの両親が道徳的に許せない行為、殺人などをしたらみんなはどういう気持ちになるだろうか。いたたまれずに学校も行きづらくなり、知らない土地へ行きたい、と考えるのではないか。逆にみんなが、例えば万引や喧嘩やシンナーなどをやったら、必ずみんなの親が謝りにくる。成績が悪ければ親同伴で先生と話をすることになる。つまり日本では親子関係は絶対に切れない存在なのである。

また、こういう話もある。日本の商社マンなどが外国の人と名刺を交換する時、日本人は必ずソニーの鈴木ですとか、トヨタの田中ですと自己紹介する。これも個人より集団に属しているという表れである。日本では集団の中の一人が大きなへまをやれば、その団体全体の責任となる。

日本は個性重視教育より集団きぞく帰属教育を重視している。企業はよく個性派の社員が欲しいと言うが、本当の個性派ではなく、集団に帰属できる個性派が欲しいのである。日本人は全て集団から出発し、個人より集団を優先させ、集団の中では自分の意志を殺さなければならない。 (つづく・感想文をお寄せ下さい)