アメリカのゴルフ事情
ここで少し余談になるがアメリカのゴルフ事情を話してみたい。アメリカは土地が広いこともあり、ゴルフはとても大衆的なスポーツの一つである。日本では私はやったことはないが、話を聞くと、コースを回ると最低二万円ぐらいはかかるとのこと。ところがアメリカでは、一人八ドルだったから、一ドル百二十五円で計算すると、日本円にして千円ぐらい。

しかも、現地の人がよくやる手と言っていたが、お金を払う場所とコース開始場所が違うし、あまりチェックが厳しくないため、一人だけの料金しか払わないことがあるそうだ。たいてい五人ぐらいで行くから、一人二ドル弱。プラス道具のレンタル代、これも勿論一人分でOK。ただ、私は左利きなので、私が仲間に入ってプレーをすると、少なくとも二人分は支払わないといけない。このためゴルフをする時、「お前とやるとよけい余計にかかる」とみんなに文句を言われたものだ。それでも一人三ドル(五百円以内)で充分楽しめる。食事代を入れても千円ぐらいである。

いい、安いはずるい
アメリカ人は日本人が働き過ぎで、いい商品を作り、それを安く売る。それは「unfair」だという。これは日本人にはない考え方である。日本では「よく働く」「いい商品を作る」「安く売る」ということはびとく美徳とみられる。これをアメリカではずるいと取るのであるから、日米関係がうまくいくはずがない。ではなぜアメリカにとって、いい商品が安く売られては困るのか。私の答えはこうである。アメリカはみんなも知っているように貧富の差が激しい国である。

だから富ある人は値段が高くてもいい商品を買う。貧しい者は安くて品質の悪いものを買う。IBMは性能はいいが高すぎる。大学生には手が出ないらしく、他社の安いコンピュータを持っている人がほとんどである。あと十ドル出せばソニー製品が買えたが、私はアメリカにいるということで、アメリカ製を買った。三ヵ月で壊れてしまった。このようなことから、安くて性能がいい日本製品がもてはやされることになる。当時、アメリカの日常品は、七○パーセント以上が日本製ではなかったろうか。

貧・富に応えた日本製品
アメリカには二つの経済の道がある。富ある者に対してと、貧しき者に対してである。だからアメリカの会社は、どちらかの層の人達に合わせた商品を作るわけだが、日本製品はどちらの層のニーズにも応えてしまった。たまらないのはアメリカの会社である。キャデラックは高すぎるけど、日本車はそれほど高くなく、しかも高品質であり豪華である。それにガソリンもあまり食わない。アメリカではガソリンは日本の半値ぐらいで入れられるのだが、当時は不況の真っ最中だったので、ガソリンを食わない日本車に人気が集中した。富ある者も貧しき者も日本製を購入することになる。こういうのを「ずるい」と言われたら、返す言葉がないのがわれわれ日本人ではないだろうか。

車を輸出、米は輸入しない
米問題も大きく尾を引いているだろう。アメリカは当時、日本車を年間二百万台から二百五十万台ぐらい輸入していた。ところが日本は、アメリカの米を一粒たりとも入れないと言い張っていた。これこそずるい日本人、とアメリカ人に見えてしまう。アメリカの米は日本の半値以下で手に入る。味は、日本の米とほとんど変わらない。アメリカの日本レストランは、カリフォルニア米を使っている。それなら日本は、安くて味もほとんど違わない、アメリカの米を輸入してもいいことになる。わが国の消費者にとっても結構な話だが、しかし、アメリカの米が輸入されると、日本の農家の存続が危ぶまれる、と反対しているわけだ。

アメリカが日本車を年間二百万台も買ってくれないと、わが国で失業者が増えることは必至である。日本国内では車が売れていない状況であっただけに、車と米の問題は深刻であった。ちなみに当時、スペインは日本車の輸入を年間五万台、フランスは七万台ぐらいに規制していた。なぜなら、日本車は輸入すればしただけよく売れ、自国の車が売れなくなってしまうからである。このことを考えると、アメリカは寛大で、大量の日本車を受け入れてくれているのである。それでいて、米を一粒たりとも入れない日本人が、「ずるく、不公正」と映っても仕方ないのかとも思う。

ところで、ずるいは「マーキュリー」ともいう。これはギリシアの小神のことで、裏でこそこそしていて、しかも二枚舌である、という意味だ。アメリカ人が日本人のことを「unfair」とか「マーキュリー」と言う背景は、主に経済問題が絡んでいるのである。アメリカ人の日本人観を知ることで、相手を理解し、話せるような関係を作ることが大事だろう。(つづく・感想文をお寄せ下さい)