彼は違った世界が見られたが、「私はとても日本では生活できない」とも言っていた。また、電車の中で大人が漫画の本を読んでニヤニヤしている姿、子供が夜遅くまで出歩いていること、ほとんどの日本人が英語を使えないことなど、彼には理解できないことだらけだったようだ。

これらはマイナス面の話だか、プラス面では、交通機関の時間の正確さには驚いていた。誤差はどこへ行っても三分以内だったという。またガソリンスタンドのサービス。アメリカではほとんど自分で給油し、お金を払いに行く。日本のように給油しながら窓を拭いたり、灰皿はどうですか、などとは絶対と言っていいほど聞かれない。日本のサービスのよさ、チップ制度がないことなどにも驚いていた。彼がいい意味で日本を理解してくれたなら、と思っている。

六千八百キロの旅
アメリカの友人が日本に来たことを紹介したが、私が勉強を教えている生徒を連れた初めての研修旅行で、再びアメリカを訪問した話をここでしょう。生徒三人とともにアメリカ・ワシントン州のシアトルへ飛び立った。私にとっては五年ぶり。学生時代、シアトルの大学と大学院で五年間の生活を送った私にとって、とても思い入れの深い土地の一つである。

私達一行は、シアトルで私の母校、ノースウエスト大学校内の寮に宿泊。四日ほど滞在。それからカナダのバンクーバー、ビクトリアと回り、再びシアトルに戻り、一泊してからオレゴン、カルフォルニアへと南下し、サンフランシスコからヨセミテ国立公園、ラスベガス、グランドキャニオン、フェニックス、サンバーディノ、ロサンゼルスへと移動。サンディエゴを通ってメキシコ(ティファナ)へ向かった。この旅はかなりハードだった。勉強を教えている生徒の外国体験旅行のコースを下見するのが、この時の旅行の目的だったからである。下見にアメリカに行く話をすると、中学生二人と高校卒業二年目の生徒(この後、アメリカに留学)が一緒に行きたいということになり、同行したわけだ。

留学中、ほとんど旅行経験がなかった私にとって、バンクーバーからティファナまでの西海岸を全てドライブできたことは、とてもいい体験であった。またサンフランシスコからグランドキャニオンまでの道程は、荒野という言葉がぴったりの道で、アメリカの広さをまざまざと見せつけられた。同行の中学生二人はアメリカのホームレスや、ティファナで子供達がガムやチョコレートを売っている姿、路上で寝ている姿にショックを受けたようだった。私はその時の旅を、ただいい思い出だけで終らせて貰いたくない、旅の体験を学生生活の中に取り入れ、有意義で実りある生活を送って欲しいと願っていただけに、この旅行は間違いなく生徒の外国研修旅行の目的を達成したと、私は確信している。

こで旅行後の生徒の感想文を紹介する。
研修旅行に参加して、一番心に残ったのはアメリカの広さということだ。日本の二十五倍の広さを持つアメリカ。とにかく広かった。先生から今回は下見旅行なので、体力的にかなりきついとは言われていた。二十五日間に六千八百キロの旅だった。一人でずっと運転していた先生もさすがにきつそうで、「次回からは飛行機移動を組み込んだ計画を立てる」と言っていた。
 次に心に残ったことは、ヨセミテ国立公園の美しさ、ラスベガスのガシノ。先生が、私と豊くん(中学三年生)に百ドルをくれたので、ブラックジャックのテーブルに着いた。初めは数回勝ったが、十五分もしないうちに、貰ったお金は無くなってしまった。

この後、グランドキャニオンへ向かった。道を間違え、大回りをしてしまい、大変な目に遭った。どうにか到着。翌日、谷間に降りようとしたが、もう一人の香澄ちゃん(中学二年生)が今にも死にそうな顔していたので、私達は一時間ほど下って、それ以上、下るのを諦めた。後二時間下ればたにぞこ谷底で、そこから上を見上げるのが絶景だと、どの本にも書いてあったので、とても残念であった。しかし、気温が四十度はあり、水を持参していなかったから、女の子にはきつかったろうと思う。下りに一時間要し、上りはゆうに二時間はかかった。しゃべくりの香澄ちゃんもさすがに一言の言葉を発せず、もくもくと上り続けた。

今回、研修旅行に参加してよかったと思うことは、パック旅行と違い、アメリカのいいところと悪いところの両方が覗けたことだ。ともすると企画旅行はいいところしかセットしない。しかし、今回は西海岸の端から端まで見ることができ、とてもいい体験ができたと感謝している(吉田洋介、この後、留学経験)。
 (つづく・感想文をお寄せ下さい)